Cherry Blossoms〜偽りの絆〜
原稿用紙を握る一花の手を、桜士はそっと触れる。緊張で握り締めることが多いのか、原稿用紙には皺が寄っていた。

「本番、僕は見に行くことができませんから、聞かせてくれませんか?eagleのことを」

医大を卒業し、研修医を終えた一花が、自身の血液型を誤魔化してまで進んだ道を、桜士はただ純粋に知りたかった。救急救命医としてここで見せている顔と、eagleとして戦場で見せている顔は、きっと違うのだろう。

「……ぜひ、知ってくれませんか?eagleのことを」

一花はそう言い、微笑む。だがいつもと違い、どこか緊張をしているのがよくわかった。

「こんにちは、eagleのメンバーの四月一日一花です」

静かな救急科に、一花の鈴を転がしたような心地よい声が響く。先ほど話してくれたように時々噛んでしまいところはあるものの、話している内容も、話す速度も、何も問題はない。

「……どうでしたか?私、こういうのは初めてで、全然ダメな気がします」
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