Cherry Blossoms〜偽りの絆〜

桜士は近くにあった椅子を軽く叩き、一花を呼ぶ。キョトンとした顔を一花はしていたため、クラウディオが言った。

「一花、君、怪我を何箇所もしてるよ。手当てしてもらいなさい」

「あっ……」

クラウディオに言われて、ようやく一花は手足にたくさんの切り傷や打撲があることに気付いたようだ。切り傷からは未だに出血がある。

「消毒しないといけません。ほら、座ってください」

「は、はい。失礼します」

一花は座り、スーツの上着を脱ぐ。スーツのブラウスやパンツは破かれており、どこか痛々しい。自分が怪我をしている中、一花は戦っていたのだ。

「少し染みますよ」

「はい。……ッ！」

消毒を始めると、一花は痛そうに顔を顰める。だがすぐにその顔には笑みが浮かんだ。

「あの時と逆ですね」

「あの時？」

「本田先生と会ったばかりの頃、病院で死亡事件が相次いだじゃないですか」

「ああ〜、そんなこともありましたね」