Cherry Blossoms〜偽りの絆〜

そういえばそんなこともあった、と桜士は懐かしさを覚える。あの時は一花が桜士の手当てをしてくれたのだ。

「本田先生」

一花が名前を呼ぶ。桜士の偽りの名前を。だが、それでも目の前で一花が生きていることが嬉しく、桜士の胸が高鳴っていく。

「はい」

ガーゼを傷口に当て、テープで固定しながら桜士は返事をする。一花は少し頰を赤く染めながら、口を動かす。

「来てくれて、ありがとうございました。本田先生がいなかったら、私ーーー」

その時、バタバタと廊下を走る音が聞こえ、桜士とクラウディオ、そして一花は一瞬にして警戒した目に変わる。桜士の片手は、ホルスターに入れられた銃に触れていた。刹那。

「姉ちゃん！！」

「一花、クラウディオ！！」

ドアを開けて入ってきたのは、eagleのメンバーたちと一花の弟二人だった。一央と伊一は泣きじゃくりながら一花に抱き付く。

「姉ちゃん、姉ちゃん！」

「伊一、一央、怪我はない？大丈夫？」

自分が傷付いているというのに、一花は二人の弟を気にかける。その優しさに桜士はまた胸を高鳴らせていた。

「無事でよかった……」

ナタリアが涙ぐみながらそう言い、他のメンバーたちも頷き、互いに抱き締め合う。

「Mr.本田！」

リティクが両手を広げる。桜士は迷うことなく、彼とハグを交わした。