愛していますよ、だから幸せになってくださいね!
「だんまりね……その通りだから何も言えないのね。ようやくジュールが元気を取り戻してきたところに貴女が帰ってくるものだから、あの子は動揺しているわ。知っての通りジュールの相手は東の国の王女なの。身分的にも血筋的にも貴女じゃ敵わないけど、ジュールの愛人くらいにはしてあげられたのに!」
……愛人という言葉を聞いて、悲しくなった。……この国にいたら私は幸せな結婚なんて出来ない。明るい未来なんてなかったんだ。
悲しいし悔しい気持ちだけれど、ここで泣いてなるものかと瞑っていた目を開いた。
「……ジュール殿下のお側を離れたのはわたくしの意思です。わたくしなりにジュール殿下の今後の幸せを祈っての事でした。臣下として東の国の第三王女殿下との婚約を心から祝福いたします。殿下とは幼い頃から親しくさせていただいておりましたが、お側にいる時間は限られていました。わたくしはわたくしなりに考えて単身外国にいる叔母の家に身を寄せました」
「逃げたんでしょう?」
チラッと王妃様が嫌な視線を寄越してくる。
「まだ十二歳だった少女がその時に出来る事を考えて行動したんですよ。単身で他国に来るのはとても勇気のある行動だと私は思います。そして両親と離れて暮らすのはさぞ寂しかった事だと思いますし、ご両親も離れたくはなかったと思います。それでも彼女の意思は強かった。それを誰も責めることなど出来ないと私は思います」
ウェズリー様がジュール殿下にも言ったように答えた。