愛していますよ、だから幸せになってくださいね!

東の国の王女

 
※少し遡っています。晩餐会の続きではありません。【東の国の王女プリシアの話です】
  

「美しい庭園ですわね」

 ジュール様と散策をしていた。

 私の婚約者ジュール様は美しい顔立ちをしている。東の国にはいないタイプの男性だった。肌は白くて伏せた目に陰影が出来るほどまつ毛が長い。

 出会った頃よりも会話は弾むし大事にしてくださるのは分かるけれど、たまに何かを考えるように遠くを見る。

 聞いてはいけない事だと思い、ジュール様が私に心を開いてくださった時に教えてくだされば良いと思った。


 この国は見えない身分格差があるのだと言う。敢えて口にはしないけれど、王族と高位貴族は次元が違うのだという。

 血筋を重んじる傾向にある為、ジュール様との婚姻が決まった。私は東の国の第三王女、身分としては悪くありません。

 
 ある日王妃様にお茶会に誘われ、この国の話やジュール様の子供の頃の話を聞いた。

 そしてジュール様が元気になったのは私のおかげだと感謝をされた。やはり何かあったのだ、と思い王妃様に聞いた。


 小さい頃からジュール様の周りをうろちょろしていた伯爵令嬢にジュール様は誑かされ騙され、心に傷がついたままだと聞いた。

 食事も喉が通らず睡眠不足で痩せ細っていたと聞いた。ひどい令嬢がいるものだと憤りを感じた。

 その話を聞いて納得した。たまに遠くを見るジュール様の切なそうな顔……

 私が支えて差し上げないと! そう思い、この国のマナーを身につけた。


 納得のいかないところは多々あるけれど、この国に嫁ぐ以上それが正解だと思った。王妃様は嬉々としてこの国のマナーを教えてくださった。





< 88 / 107 >

この作品をシェア

pagetop