愛していますよ、だから幸せになってくださいね!

「ミシェルだ、やっと会えた」



 そう言った。噂の悪女、伯爵令嬢だった。


 でもその隣には南の国のウェズリー殿下がいて、愛おしそうにミシェルという女をエスコートしていた。それを見てジュール様は機嫌が悪くイライラしている様子だった。

 今にもあの二人に駆け寄りミシェルという女を攫いそうな、そんな狂気じみた顔付き。初めて見るその顔に胸が痛んだ。


 ミシェル伯爵令嬢はジュール様を捨てて南の国へ行き、ウェズリー殿下を誑かし婚約までしたのだそうだ。

 たかが伯爵令嬢の分際で生意気な女だと思った。


 学園の行き帰りは同じ馬車で通学し仲が良さそうだった。ウェズリー殿下はいつも何かから守るように伯爵令嬢を庇っている。


 ウェズリー殿下は王族という身分なのに情けない男だと思った。

 威厳など全く感じられない。

 この国の王太子と同じ匂いがした。


 王太子はこの国の目に見えない身分差を嫌っており、陛下に進言し格差を無くそうと奔走しているという。


 王族と上位貴族を守るのが、その他貴族の勤めなのに、格差をなくすなんて馬鹿げた事を言い出す王太子殿下はいずれ国のトップになる。

 その時に国は荒れると思ったわ。

 そしたらジュール殿下に王位が転がる可能性もある。だから王太子殿下の行動を見張るように言った。


 それにより派閥ができた。


 王太子の婚約者ブリジッド様の家は公爵家で、その公爵家が格差をなくす事に賛成しているという。情けない家だわ!


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