「信じられない」を、「真実の愛」に変えてくれたキミへ
「沙也加……?」
わたしが開けた部屋には、2番目の姉・沙也加が仏壇に手を合わせていた。
わたしの声にピクリと反応した沙也加は、首を動かして振り返る。
「百々葉、帰ってたの」
「うん、今帰ってきたとこ。翠の家でカップケーキもらってきたから、沙也加も食べなよ」
「ありがとう」
わたしが袋を差し出すと、沙也加はそっと受け取った。
沙也加の前には、仏壇に飾られた写真に写っている、幼い男の子。
その傍に置いてある、あんまり汚れていない黒のランドセル。
恵理奈と沙也加、そしてわたしのお兄ちゃん。
わたしが2歳だった頃に、夏彦お兄ちゃんは7歳で亡くなった。
……お兄ちゃんの命が消えたことで、わたし達家族は全てを失ったといっても過言ではない。