もう、秘密になんて出来ないっ!
「おに…っ、れ、漣!」
反射的に店員さんの手元を見ると、チャームはもう包み紙に入れられていた。
良かった。見られていない。
「う、うん。イニシャル付きのチャームを買ったの」
ホッとしながら素直に答えると、兄は「ふーん」と言いながらも気になるようで、
「ふたつ買ってるよな?もうひとつは俺の?」
「えっ!?ちがっ、」
「違うの?他の男の?」
「そんなわけないでしょっ」
「じゃあやっぱり俺のじゃん」
「う…」
「お待たせ致しましたぁ」
言質(げんち)を取られてタジタジのわたしを見てニヤニヤが止まらない兄。
そんな兄に見惚れて頬を赤らめている店員さん。
そんな店員さんを見て何だか気分が悪くなったわたしは、品物を受け取ると足早に店を後にした。
兄がモテることは嫌ほど知っているのに、いざ目(ま)の当たりにすると胸がザワザワするし、ムカムカもする。
自分の兄がモテるのは寧(むし)ろ鼻高々に思っていいはずなのに…。