もう、秘密になんて出来ないっ!

人差し指をわたしの鼻先にチョンっとのせながら言った。

「騎士(ナイト)」が誰を指したのかを瞬時に察したわたしの顔色がみるみるうちに青くなる。

「…まさかとは思うけれど、お兄ちゃんの事じゃないよね?」

「あら。漣(れん)以外に誰がいるっていうのよ」

「やだっ!!!」

ダイニングテーブルの向かいに座っている母に全力で抗議する。

「なんでよ」

「だってお兄ちゃんと暮らしたら自由に遊べなくなるしっ!彼氏だって…!!」

「アンタ、一丁前に彼氏なんているの?」

「…ま、まだ、いないけどっ」

「でしょうね」

でしょうね!?

「今はまだいないけど、5年もあれば彼氏のひとりやふたりぐらい出来るもんっ!そうなったらお兄ちゃんの事だから絶対別れさせようとしてくるよ!?わたしだって青春したいっ!」

「5年ぐらい彼氏がいなくても死にはしないわよ。いい?母さんたちが日本に帰って来るまでは彼氏禁止!漣を見なさいよ、あんなにモテるのに未だに彼女も作らずにアンタひとすじじゃない」

「そっちのがおかしいでしょっ!!??」

モテるのに彼女も作らずに妹のことをひたすら溺愛している兄なんてシスコンが過ぎるよっ。

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