もう、秘密になんて出来ないっ!
恐る恐る兄を見やれば、変わらず眼は閉じていて寝息も聞こえる。
…それにしても、だ。
兄は、わたしのことを夢の中でも抱き締めたりしているのか…。
「…髪。冷たい、よ?」
気付けば兄の艶やかな髪を梳(す)いていた。
濡れているのにサラサラだなんてムカつく。
今度は顔にかかっている髪を後ろに流して綺麗すぎる寝顔を拝む。
こんな時じゃないとまじまじと見れないもんね。
「うわ、まつ毛ながっ…」
人差し指で軽くちょんちょんっとその長くて繊細なまつ毛をつついてみた。
一瞬ピクリと反応したが起きる気配はまだない。
それをいいことに、わたしの行動はどんどん大胆になってゆく。
今度は、薄くて形のいい唇を小指ですぅとなぞってみた。
…この唇で兄は毎日わたしに甘い言葉を紡いでいるのか。
リップクリームを塗っているところを見たことがないのに、なんなんだこのピンク色でぷるぷるとした唇は…!