もう、秘密になんて出来ないっ!

兄はわたしと違って童顔ではないし、むしろその落ち着いた雰囲気から実年齢より上に見られることも珍しくない。

けれど、今の兄は。

無防備にスヤスヤと眠っているその顔は、普段の兄よりずっと幼く見えるではないか。

なんか、ムズムズとした感情が湧き上がってくるのを感じる。

こんな兄の寝顔、誰にも見せたくないな。

これは、わたしだけが見ていい寝顔。

わたしだけの、お兄ちゃん。

わたしだけの、

「…れん…」

少し冷たくなった兄の頬にそっとキスを落とした。

わたし自身もこの時かなりの眠気が襲ってきていて、自分がどれほど大胆なことをしたのか解らず、そのまま兄の隣に寝転がるとすぐ睡魔に食いつかれて深い眠りに落ちた。


わたしが爆睡した後、

「__っ、」

兄がこれでもかと言うほどに顔を赤くしてプルプル震えていたなんて、知る由(よし)もなく。




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