もう、秘密になんて出来ないっ!
名前を呼ばれビクリと体が跳ねる。
「そそ、この子。みあ、怖くないから顔あげなって。手、繋いだままにしてあげるから」
わたしはそんな志穂ちゃんの優しい言葉に応えられず、泣きそうになっていた。
やだ、帰りたい。やっぱり来るんじゃなかった。
お兄ちゃん…!
涙が地面にこぼれ落ちたのとほぼ同時だった。
大きな手が優しくわたしの両頬を包み、思わず顔を上げる。
涙に濡れた瞳に映ったのは、とても綺麗なひと。
ミルクティー色の前下がりのナチュラルマッシュヘアに両耳にはピアスが数個ずつ開いていて、シュッとした高い鼻に形の良い唇。
何よりも奥二重のなか。
ヘーゼルナッツのような色の瞳が…
「…あ、」
とても、綺麗で。
「…やばくない?めっちゃ可愛いんだけど」
「へぇ。お前が女の子のこと褒めるなんて珍しいな」
さっきまで志穂ちゃんと話していた声の人が見るからに驚いている。