転生織姫の初恋
――「……なにしてるんです?」
織姫の腰を抱き寄せ、深く彼女を求めていると、ガラリと扉が開いた。
「…………梁瀬先生」
その声に我に返れば、保健室の入口に梁瀬が立っていた。キスをする二人を呆然と見つめ、硬直している。
彦星は動揺で頭が真っ白になった。
「あーぁ。バレちゃったね」
織姫は悪びれる様子もなく、ケロリとして彦星から降りる。
「巡屋さん、これはどういうこと? 天月先生、説明して下さい」
簗瀬は鋭い視線を向ける。
「これは……」
「ただの遊びだよ。だって先生素直で純粋なんだもん。織姫がただからかいたくなっちゃっただけ」
織姫は取り繕うことも、彦星に責任を押し付けることもしなかった。
まっすぐなその姿は、少しだけ天界の頃の織姫とリンクしていた。
彦星は首を横に振り、
「違います。悪いのは、生徒に手を出した僕です。僕が無理やり、彼女に迫りました」
「は?」
織姫が目を見張る。
彦星は気にせず、織姫に言った。
「とりあえずあなたは授業に戻りなさい。簗瀬先生、事情は僕から話します。彼女はとりあえず返してもよろしいですか?」
「先生?」
「……わかりました」
「先生、待ってよ。織姫は」
「いいから、早く」
いつになく強い口調の彦星に、織姫はグッと奥歯を噛んだまま教室へ戻って行った。