野良ヴァンパイアに吸血契約されちゃいました
「な、に」



「そんなに落ち込まないで。心羽は悪くない。ちゃんと言わなかった俺が悪い」



「でもっ」



そこまで言ったところでルカくんに口を手で塞がれた。



「自分を卑下しないで、俺まで悲しくなる」



あぁ、なんて優しいんだろう。悪いのは私なのに、わざわざ私を庇ってくれる。


ギュッ、


ルカくんは私を抱きしめた。優しく包み込むようなハグだった。安心しきった私はルカくんに身を委ねた。このまま死んでもいいと思えた。


何秒、何分こうしていたんだろう。気付けば春の日の夕日が傾き始めていた。



「心羽、そろそろ帰ろう」



「うん」



私たちは揃って立ち上がった。ルカくんが重たい屋上の扉を開けてくれた。



「お先にどうぞ」



「ありがと」



こういう一つ一つのことでも優しいなって思った。素でこれだから多分モテる。だ、だからって私が好きになるってことはないからっ!…多分。


ガチャリと大きな音がして扉が閉められた。


二人して静まり返った廊下を歩く。まだ帰りたくない、と思ったことは黙っておこう。


下駄箱まできたところでルカくんが口を開いた。



「これ言うのめっちゃ恥ずいんだけどさ、まだ帰りたくない」



急激に頬に熱が篭った気がした。
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