新そよ風に乗って 〜幻影〜
翌朝、栗原さんに言われた言葉をまだ引きずったまま会社に向かい、事務所に入って席に向かっていると、途中、何だかやけに事務所内の人達の視線を感じた。
何か、今日の髪型が変なのかな? いつもと変わらないけど、もしかして見えない後ろに寝癖でもあるのかもしれない。後で、トイレに行って見てこよう。
そんなことを思いながら、席に着いた。
「おはようございます」
「矢島さん。おはよう」
あれ?
珍しいな。今朝は、高橋さんの姿が見えない。
もう今日からは電車で帰ろうと決めてはいたが、昨日の気まずい別れが気になっていて、高橋さんの顔が早く見たかった。
「あっ。今、高橋さん。ちょっと、部長と会議室で話してるから」
「そ、そうですか」
バッグを引き出しにしまって、雑巾を取ってこようとして事務所を出て流しに向かうと、何人かの女子社員が集まって話をしていた。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
何?
私が挨拶をすると、何かをゴミ箱に捨てて一斉に去っていってしまった。
不思議に思いながら、流しで雑巾を濡らして絞りながら、ふとゴミ箱を見ると、カラフルな文字で書かれたA4ぐらいの紙が二つ折りになって捨ててあった。
何だろう?
雑巾を絞り終わってから、さっきの人達が捨てていったその紙が何かと思って、ゴミ箱から拾って広げてみた。
「何、これ……」
経理の皆さんへ
【内部告発】 — 会計監査の管理職と女子社員は、上司と部下以上の特別な関係を持っている。—
いったい、誰がこんなことを?
何のために?
まさか、経理の事務所内に居る人、全員に配られているの?
でも、私の席には置いてなかった。
高橋さんは、このことを知っているのだろうか?
あっ……。
『あっ。今、高橋さん。ちょっと、部長と会議室で話してるから』 と中原さんが言っていたけれど、もしかして……。それは、このことと何か関係があるんじゃ……。
だからだ。だから今朝、事務所に入っていった時の雰囲気が、やけに不自然で人の視線を凄く感じたのは。
絞った雑巾を持ったまま暫く呆然としていると、予鈴がなってしまい、慌ててそのビラを無造作に折ってポケットにしまい、雑巾を元の場所に戻して事務所に戻ると、やはりさっきと同じようにみんなの視線を一身に浴びてしまった。
嫌だな。何で、こんなことに……。
いったい、誰が?
高橋さんは、そんな人じゃないのに。それは、私が一番よく知っている。
席に戻ると、栗原さんが来ていた。
「おはようございます。矢島さん」
「お、おはようございます」
わざとらしく、深々とお辞儀をしてみせた栗原さんの行動に嫌気がしたが、とにかく今は落ち着こうと思い、一旦、席に座った。
「矢島さん。朝礼始まるよ」
「あっ、はい」
息つく暇もなく、立ち上がって朝礼の整列する場所に向かう途中も、前を歩いている人達に、後ろを振り返りながらひそひそと何か言われている感じだった。
「おはよう」
エッ……。
何か、今日の髪型が変なのかな? いつもと変わらないけど、もしかして見えない後ろに寝癖でもあるのかもしれない。後で、トイレに行って見てこよう。
そんなことを思いながら、席に着いた。
「おはようございます」
「矢島さん。おはよう」
あれ?
珍しいな。今朝は、高橋さんの姿が見えない。
もう今日からは電車で帰ろうと決めてはいたが、昨日の気まずい別れが気になっていて、高橋さんの顔が早く見たかった。
「あっ。今、高橋さん。ちょっと、部長と会議室で話してるから」
「そ、そうですか」
バッグを引き出しにしまって、雑巾を取ってこようとして事務所を出て流しに向かうと、何人かの女子社員が集まって話をしていた。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
何?
私が挨拶をすると、何かをゴミ箱に捨てて一斉に去っていってしまった。
不思議に思いながら、流しで雑巾を濡らして絞りながら、ふとゴミ箱を見ると、カラフルな文字で書かれたA4ぐらいの紙が二つ折りになって捨ててあった。
何だろう?
雑巾を絞り終わってから、さっきの人達が捨てていったその紙が何かと思って、ゴミ箱から拾って広げてみた。
「何、これ……」
経理の皆さんへ
【内部告発】 — 会計監査の管理職と女子社員は、上司と部下以上の特別な関係を持っている。—
いったい、誰がこんなことを?
何のために?
まさか、経理の事務所内に居る人、全員に配られているの?
でも、私の席には置いてなかった。
高橋さんは、このことを知っているのだろうか?
あっ……。
『あっ。今、高橋さん。ちょっと、部長と会議室で話してるから』 と中原さんが言っていたけれど、もしかして……。それは、このことと何か関係があるんじゃ……。
だからだ。だから今朝、事務所に入っていった時の雰囲気が、やけに不自然で人の視線を凄く感じたのは。
絞った雑巾を持ったまま暫く呆然としていると、予鈴がなってしまい、慌ててそのビラを無造作に折ってポケットにしまい、雑巾を元の場所に戻して事務所に戻ると、やはりさっきと同じようにみんなの視線を一身に浴びてしまった。
嫌だな。何で、こんなことに……。
いったい、誰が?
高橋さんは、そんな人じゃないのに。それは、私が一番よく知っている。
席に戻ると、栗原さんが来ていた。
「おはようございます。矢島さん」
「お、おはようございます」
わざとらしく、深々とお辞儀をしてみせた栗原さんの行動に嫌気がしたが、とにかく今は落ち着こうと思い、一旦、席に座った。
「矢島さん。朝礼始まるよ」
「あっ、はい」
息つく暇もなく、立ち上がって朝礼の整列する場所に向かう途中も、前を歩いている人達に、後ろを振り返りながらひそひそと何か言われている感じだった。
「おはよう」
エッ……。