新そよ風に乗って 〜幻影〜
高橋さん。何、考えてるの?
だけど、言っても今は酔っているから通じないかもしれない。
「分かりました。それじゃ、本当に少しだけ」
そう言うと、高橋さんは何度も頷いている。そんな高橋さんを見てしまうと、いつも会社で見せる姿と違って、そのギャップが何とも言えない。母性本能をくすぐられるような子供っぽさを、偶に高橋さんは見せるから。
エレベーターに乗って、高橋さんの部屋へと向かう。
高橋さんが、玄関の鍵を開けた。
「入って」
「は、はい。お邪魔します」
高橋さんの部屋に泊まったこともあるけれど、何度来ても何故かその度に緊張してしまう。
部屋に入ると、高橋さんは部屋の鍵をリビングのテーブルの上に置いて、着ていたジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛けると、ソファーに勢いよく座った。
私が居てもいいのかな?
疲れているだろうし、早くベッドで寝たいんじゃないかな?
やっぱり、もう帰ろう。
「あの……」
「悪い。水くれるか?」
ネクタイを緩めながら、高橋さんがソファーの背もたれに体を沈めながらそう言った。
「あっ、はい」
急いでキッチンに向かい、冷蔵庫の場所も覚えていたので迷わず冷蔵庫の扉を開けてミネラルウォーターのボトルを出して、グラスに注いでソファーに座っている高橋さんの元へと持って行った。
「高橋さん。お待たせしました」
「……」
あれ? 反応がない。
そっと顔を覗き込むと、高橋さんは眠ってしまっていた。
寝ちゃったの?
でも、ソファーで寝てしまったら風邪をひいてしまう。
ちゃんと、ベッドで寝てもらわないと……。
「高橋さん。こんなところで寝たら、風邪ひきますよ。ちゃんとベッドで寝て下さい」
「分かってる」
はい?
分かってるって、ちっとも行動に移してくれないじゃない。
「高橋さん。お水も持ってきましたから、飲んでベッドで寝ないと風邪ひきますよ」
仕方なく何度も肩を揺すってみたが、全く起きる気配がない。
あっ。
このグラスを、高橋さんの頬に付けてみたら起きるかもしれない。
冷えたお水の入ったグラスを、高橋さんの頬に付けてみた。
「な、何だよ」
うわっ。
驚いた高橋さんがグラスを払い除けた拍子に、グラスの中の水が床に零れてしまった。
しかし、一旦起きた高橋さんだったが、また直ぐに眠ってしまったようだった。
困ったな。どうしよう……。
今度は、右頬に付けてみようか。
グラスを左手に持ち替えて、高橋さんの右頬にグラスを付けて左肩を揺すった。
「高橋……キャッ……」
すると、いきなり高橋さんに両腕を掴まれて、そのままソファーに倒されてしまった
同時に左手に持っていたグラスを床に落としてしまい、グラスが倒れて中の水が床に細長い線を描くように零れてしまっていた。
ちょ、ちょっと、待って。
「た、高橋さん……」
高橋さんが、私の上に覆い被さっている。
このままでは、身動きが取れない。
高橋さんの体を持ち上げようとしたが、重くてまったく動かないし、しかも寝ているのか全く反応がない。
「高橋さん。すみません、どいて下さい。重くて……起きて下さい。高橋さん」
何度も呼びかけているのに、高橋さんは起きてくれない。
「高橋さん。お願いですから、起きて下さい。高橋さん」
けれど、微かに聞こえてくるのは、規則正しい寝息だけ。
どうしよう。このままでは、帰ることも出来ない。
重たい……。
太ってはいないが、流石に体の大きな高橋さんが上から覆い被さっていると重くて仕方がない。
「高橋さん。高橋さん……。高橋さん! 起きて下さい」
「うーん……」
だけど、言っても今は酔っているから通じないかもしれない。
「分かりました。それじゃ、本当に少しだけ」
そう言うと、高橋さんは何度も頷いている。そんな高橋さんを見てしまうと、いつも会社で見せる姿と違って、そのギャップが何とも言えない。母性本能をくすぐられるような子供っぽさを、偶に高橋さんは見せるから。
エレベーターに乗って、高橋さんの部屋へと向かう。
高橋さんが、玄関の鍵を開けた。
「入って」
「は、はい。お邪魔します」
高橋さんの部屋に泊まったこともあるけれど、何度来ても何故かその度に緊張してしまう。
部屋に入ると、高橋さんは部屋の鍵をリビングのテーブルの上に置いて、着ていたジャケットを脱いで椅子の背もたれに掛けると、ソファーに勢いよく座った。
私が居てもいいのかな?
疲れているだろうし、早くベッドで寝たいんじゃないかな?
やっぱり、もう帰ろう。
「あの……」
「悪い。水くれるか?」
ネクタイを緩めながら、高橋さんがソファーの背もたれに体を沈めながらそう言った。
「あっ、はい」
急いでキッチンに向かい、冷蔵庫の場所も覚えていたので迷わず冷蔵庫の扉を開けてミネラルウォーターのボトルを出して、グラスに注いでソファーに座っている高橋さんの元へと持って行った。
「高橋さん。お待たせしました」
「……」
あれ? 反応がない。
そっと顔を覗き込むと、高橋さんは眠ってしまっていた。
寝ちゃったの?
でも、ソファーで寝てしまったら風邪をひいてしまう。
ちゃんと、ベッドで寝てもらわないと……。
「高橋さん。こんなところで寝たら、風邪ひきますよ。ちゃんとベッドで寝て下さい」
「分かってる」
はい?
分かってるって、ちっとも行動に移してくれないじゃない。
「高橋さん。お水も持ってきましたから、飲んでベッドで寝ないと風邪ひきますよ」
仕方なく何度も肩を揺すってみたが、全く起きる気配がない。
あっ。
このグラスを、高橋さんの頬に付けてみたら起きるかもしれない。
冷えたお水の入ったグラスを、高橋さんの頬に付けてみた。
「な、何だよ」
うわっ。
驚いた高橋さんがグラスを払い除けた拍子に、グラスの中の水が床に零れてしまった。
しかし、一旦起きた高橋さんだったが、また直ぐに眠ってしまったようだった。
困ったな。どうしよう……。
今度は、右頬に付けてみようか。
グラスを左手に持ち替えて、高橋さんの右頬にグラスを付けて左肩を揺すった。
「高橋……キャッ……」
すると、いきなり高橋さんに両腕を掴まれて、そのままソファーに倒されてしまった
同時に左手に持っていたグラスを床に落としてしまい、グラスが倒れて中の水が床に細長い線を描くように零れてしまっていた。
ちょ、ちょっと、待って。
「た、高橋さん……」
高橋さんが、私の上に覆い被さっている。
このままでは、身動きが取れない。
高橋さんの体を持ち上げようとしたが、重くてまったく動かないし、しかも寝ているのか全く反応がない。
「高橋さん。すみません、どいて下さい。重くて……起きて下さい。高橋さん」
何度も呼びかけているのに、高橋さんは起きてくれない。
「高橋さん。お願いですから、起きて下さい。高橋さん」
けれど、微かに聞こえてくるのは、規則正しい寝息だけ。
どうしよう。このままでは、帰ることも出来ない。
重たい……。
太ってはいないが、流石に体の大きな高橋さんが上から覆い被さっていると重くて仕方がない。
「高橋さん。高橋さん……。高橋さん! 起きて下さい」
「うーん……」