新そよ風に乗って 〜幻影〜
「そうなの? でも、高橋さんは凄くモテたみたいなことも言ってたから」
「だからこそ、ハイブリッジはやめといた方がいいのよ」
だからこそ?
「もし、もしも、陽子の言うとおり、ハイブリッジが言ったそのミサって人が昔、振られた彼女だったとしてだよ? だいたい、それだけモテたんだったら、何故にその振られた女に今でも固執してるの? 女に事欠かないぐらいモテる男が、たかが1人の女に振られたことを何で未だに引きずってるの? どのぐらい酔ってたのかは知らないけど、酔った拍子に昔の女の名前を口走るのは何故だと思う? 陽子。分かる?」
高橋さんが酔った拍子に口走った、ミサという名前の女性。
高橋さんを振った女性なのに、何故まだ……。
「それは、ハイブリッジの中に、まだその女性が住んでるってこと」
そんな……。
「あれだけモテて、女に不自由しないのに、それでも振られた女の名前を口走るなんて、それ以外、考えられないから」
高橋さんの中に、まだその女性が住んでるなんて……。もう、卒業して何年も経っているというのに。それなのに……。
『多分……忘れないだろうな』 と、高橋さんが言ってたことは、そういうことなの? だから、まともな恋愛はできないって……。
「悪いことは言わない。陽子。ハイブリッジのことは、もうやめといた方がいい。そんな昔の女のことを引きずってる男なんてやめて、もっと明るい恋をした方がいいよ。男なんて、星の数ほど居るんだからさ」
まゆみ……。
「そ、そうだよね。その方が……」
「建前は、此処で終わり。これからは、女の本質について話すから」
エッ……。
「今、陽子。あっさり、私の意見に賛同しようとしたわよね? でも、本心じゃないわよね?」
「そ、それは、その……」
まゆみに、ズバッと核心を突かれた気がした。
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