新そよ風に乗って 〜幻影〜
書類を見ていても、出張のことを思い出してしまい、そのことを考えただけで憂鬱になってしまっている。
ああ。何で、高橋さんと一緒に出張に行かなければいけないんだろう。丸々2日間、一緒に居なければいけないと思うと、今から出張の2日間が思いやられた。
「どうしたのよ? まぁた、浮かない顔してさ」
「まゆみ……」
1人でランチを食べていると、最近、ランチに出る時間が同じなのか、まゆみと社食でよく会う。
「どうした、どうした?」
「それが……」
まゆみに、出張の件を話した。
「はあ? ハイブリッジの出張に帯同? 陽子。願ってもないチャンス到来」
「まゆみ。そういう問題じゃないのよ」
「何でよ? だって、きっかけさえ掴めれば話せるでしょう? その何だっけ……。ミサって人のことだって、どういう関係だったのか聞けるじゃない?」
「無理。絶対、聞けない」
「もったいないなあ。せっかく、いい機会なのに。だけど、ずっと一緒に居たら新たな発見もあるかもしれないね。こんな一面持ってたんだとか、この人、こんなに変な癖あったんだとかさ」
「変な癖?」
「そうよ。陽子。もし、ハイブリッジがぬいぐるみ抱えてないと寝られないから、持参してきたんだ。なんて言い出したら、どうする?」
「や、やめてよ。まゆみ。そ、そんなこと、あるわけないじゃない」
「分からないわよお? 人は、見かけによらないってよく言うしね。意外とハイブリッジは、赤ちゃんプレイとかが好きだったりするかも? よだれかけしちゃって、おしゃぶりしゃぶって……」
「まゆみ!」
「おお。怖い、怖い。それだけ元気があれば、出張も大丈夫だ。心配して損したわ」
まゆみ……。
まゆみの脳天気な話を聞いていると、さっきまでの憂鬱さも少しなくなっていた。
「でも、陽子」
「えっ? 何?」
そう言って、まゆみがテーブル越しに手招きをしたので、少し乗り出してまゆみに顔を近づけた。
「必ず勝負下着は、持ってきなさいよ。何があるか、分からないんだから」
ハッ!
「な、何、言ってるのよ。もう、まゆみ。私は、この前も言ったけど、単なる憧れだから、遠くから見てるだけでいいの。それだけで、満足なんだから」
「ふーん。まあ、そういうことにしといてあげるか」
そうなんだ。高橋さんのことは、単なる憧れ。社会人になって、初めて接した上司だったから。凄く大人で、いつも冷静で……。だから、社会人として憧れてたんだ。あの夜のことは、思い出すたびに胸が締め付けられるけど、でもあのことがあったからそんな気持ちに気づかせてくれた。高橋さんは、私の憧れの上司なんだ。
ああ。何で、高橋さんと一緒に出張に行かなければいけないんだろう。丸々2日間、一緒に居なければいけないと思うと、今から出張の2日間が思いやられた。
「どうしたのよ? まぁた、浮かない顔してさ」
「まゆみ……」
1人でランチを食べていると、最近、ランチに出る時間が同じなのか、まゆみと社食でよく会う。
「どうした、どうした?」
「それが……」
まゆみに、出張の件を話した。
「はあ? ハイブリッジの出張に帯同? 陽子。願ってもないチャンス到来」
「まゆみ。そういう問題じゃないのよ」
「何でよ? だって、きっかけさえ掴めれば話せるでしょう? その何だっけ……。ミサって人のことだって、どういう関係だったのか聞けるじゃない?」
「無理。絶対、聞けない」
「もったいないなあ。せっかく、いい機会なのに。だけど、ずっと一緒に居たら新たな発見もあるかもしれないね。こんな一面持ってたんだとか、この人、こんなに変な癖あったんだとかさ」
「変な癖?」
「そうよ。陽子。もし、ハイブリッジがぬいぐるみ抱えてないと寝られないから、持参してきたんだ。なんて言い出したら、どうする?」
「や、やめてよ。まゆみ。そ、そんなこと、あるわけないじゃない」
「分からないわよお? 人は、見かけによらないってよく言うしね。意外とハイブリッジは、赤ちゃんプレイとかが好きだったりするかも? よだれかけしちゃって、おしゃぶりしゃぶって……」
「まゆみ!」
「おお。怖い、怖い。それだけ元気があれば、出張も大丈夫だ。心配して損したわ」
まゆみ……。
まゆみの脳天気な話を聞いていると、さっきまでの憂鬱さも少しなくなっていた。
「でも、陽子」
「えっ? 何?」
そう言って、まゆみがテーブル越しに手招きをしたので、少し乗り出してまゆみに顔を近づけた。
「必ず勝負下着は、持ってきなさいよ。何があるか、分からないんだから」
ハッ!
「な、何、言ってるのよ。もう、まゆみ。私は、この前も言ったけど、単なる憧れだから、遠くから見てるだけでいいの。それだけで、満足なんだから」
「ふーん。まあ、そういうことにしといてあげるか」
そうなんだ。高橋さんのことは、単なる憧れ。社会人になって、初めて接した上司だったから。凄く大人で、いつも冷静で……。だから、社会人として憧れてたんだ。あの夜のことは、思い出すたびに胸が締め付けられるけど、でもあのことがあったからそんな気持ちに気づかせてくれた。高橋さんは、私の憧れの上司なんだ。