新そよ風に乗って 〜幻影〜
午後、自分の仮払いの申請を出そうと必要事項を記入していたが、肝心の出張先をまだ聞いていなかったので、空欄のまま分かるところだけ記入して高橋さんの席の決済箱に入れに行った。
「すみません。しゅ、出張の仮払い申請書を書いたのですが……」
「分かった。後で判押しておく。あっ、そうだ。出張先をまだ言ってなかったから、書けなかったんじゃないのか?」
「は、はい」
「出張先は、大阪だから」
大阪。
「ありがとうございます。書いてきます」
「ああ、いいよ。書いておくから」
「すみません。ありがとうございます」
今、こうして話しているだけでも、何か息が詰まりそうなのに、出張でずっと一緒に居たら本当にどうなっちゃうんだろう?
今から、そんな心配をしても始まらないんだけれど、どうしても色々考えてしまう。
そんな思いのまま、出張前日を迎えてしまっていた。
忘れ物がないかどうか、何度も荷物を確認したが、相変わらず荷物が多い。これでもだいぶ減らした方なのだが、それでもとても一泊二日の出張とは思えないほどの荷物だ。
おまけに、明日からのことを考えるととても気が重い。
会社で高橋さんから受け取った飛行機のチケットを眺めながら、出来ることなら逃げ出したい気分だった。
あれ?
大きな溜息をついていると、ポケットで携帯が震えだしたので、慌ててポケットから取り出して携帯画面を見ると、そこには高橋さんの名前が表示されていた。
一気に緊張して、心臓がドキドキしている。
とにかく出なければと思い、少し震える指で受話器ボタンを押した。
「も、もしもし」
「高橋です」
高橋さんの声を、携帯越しに聞いているのに緊張している。けれど、その緊張の中にあって耳に響く高橋さんの声が、さっきまで会社で会っていたはずなのに、凄く懐かしいような、安心出来るような、何とも言葉に言い表せないような気持ちになっていた。
「明日の朝、迎えに行くから」
「えっ? そ、そんな、大丈夫です。ちゃんと時間通りに、空港まで電車で行かれますから」
「荷物、また多いんだろ?」
エッ……。
「あっ。あの、それも大丈夫ですから」
何か、変な言い方になってしまっている。
「フッ……。いいから、家で待っててくれ。6時半前後に、迎えに行く。家の前に着いたら、電話するから。それじゃ、おやすみ」
「えっ? あ、あの、高橋さん。もしもし? も……」
切れちゃった。
「すみません。しゅ、出張の仮払い申請書を書いたのですが……」
「分かった。後で判押しておく。あっ、そうだ。出張先をまだ言ってなかったから、書けなかったんじゃないのか?」
「は、はい」
「出張先は、大阪だから」
大阪。
「ありがとうございます。書いてきます」
「ああ、いいよ。書いておくから」
「すみません。ありがとうございます」
今、こうして話しているだけでも、何か息が詰まりそうなのに、出張でずっと一緒に居たら本当にどうなっちゃうんだろう?
今から、そんな心配をしても始まらないんだけれど、どうしても色々考えてしまう。
そんな思いのまま、出張前日を迎えてしまっていた。
忘れ物がないかどうか、何度も荷物を確認したが、相変わらず荷物が多い。これでもだいぶ減らした方なのだが、それでもとても一泊二日の出張とは思えないほどの荷物だ。
おまけに、明日からのことを考えるととても気が重い。
会社で高橋さんから受け取った飛行機のチケットを眺めながら、出来ることなら逃げ出したい気分だった。
あれ?
大きな溜息をついていると、ポケットで携帯が震えだしたので、慌ててポケットから取り出して携帯画面を見ると、そこには高橋さんの名前が表示されていた。
一気に緊張して、心臓がドキドキしている。
とにかく出なければと思い、少し震える指で受話器ボタンを押した。
「も、もしもし」
「高橋です」
高橋さんの声を、携帯越しに聞いているのに緊張している。けれど、その緊張の中にあって耳に響く高橋さんの声が、さっきまで会社で会っていたはずなのに、凄く懐かしいような、安心出来るような、何とも言葉に言い表せないような気持ちになっていた。
「明日の朝、迎えに行くから」
「えっ? そ、そんな、大丈夫です。ちゃんと時間通りに、空港まで電車で行かれますから」
「荷物、また多いんだろ?」
エッ……。
「あっ。あの、それも大丈夫ですから」
何か、変な言い方になってしまっている。
「フッ……。いいから、家で待っててくれ。6時半前後に、迎えに行く。家の前に着いたら、電話するから。それじゃ、おやすみ」
「えっ? あ、あの、高橋さん。もしもし? も……」
切れちゃった。