新そよ風に乗って 〜幻影〜
うわっ。
ち、近いです。近過ぎですって、高橋さん。
真顔で声のトーンまで変えられて迫ってこられると、ドキドキしてしまってもう何もできない。
「そろそろ行くぞ。明良がきっと、待ち疲れてる」
そう言うと、高橋さんはシートベルトをして車を発進させた。
何だか、私1人で勘違いして馬鹿みたい。それに……いきなり、一瞬だけだったけれど、高橋さんの唇が私の唇に触れて……うわぁ。
思い出しただけで鼓動が早くなって、思わず両手で口を押さえていた。
「どうかしたのか?」
嘘。
高橋さんに、怪しまれてしまった。
「あっ、い、いえ、何でもないです」
まさか、さっきのキスのことを思い出してました。なんて、とても恥ずかしくて言えない。ただでさえ、高橋さんの顔をまともに見られないというのに。
「フッ……。お前は、本当によく分からない」
高橋さんが微笑みながらそう言っていたが、私にしてみたら、そういう高橋さんこそ、よく分からない。高橋さんは、何時だって何でそんなに余裕なんだろう? 私は、何時も焦ってばかりいる。でも、そんな高橋さんと……。うわぁ、まただ。もう、思い出すのはやめよう。でも、直ぐにまた思い出してしまう。助手席に座って、忙しく変わる私の行動を見て、高橋さんが盛んに小首を傾げながら微笑んでいた。
明良さんの家は、高橋さんと同じようにマンションで地下に駐車場があって、高橋さんは勝手知ったるといった感じで客用駐車スペースに車を停めると、助手席のドアを開けてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「歩けるか?」
「はい。大丈夫です」
地下駐車場からエレベーターホールに入る手前にガラス張りの自動ドアがあり、玄関のエントランスと同じようにオートロックになっていた。
高橋さんが部屋番号を押して、インターホンを鳴らすと直ぐに明良さんの声がした。
「ホイさ」
高橋さんが声を発する前にドアが開いたので、高橋さんは無言のまま私を誘うようにしてエレベーターホールに入ると、ボタンを押してエレベーターを待っていた。
程なくしてエレベーターが到着して乗ると、11階のボタンを押した。
ち、近いです。近過ぎですって、高橋さん。
真顔で声のトーンまで変えられて迫ってこられると、ドキドキしてしまってもう何もできない。
「そろそろ行くぞ。明良がきっと、待ち疲れてる」
そう言うと、高橋さんはシートベルトをして車を発進させた。
何だか、私1人で勘違いして馬鹿みたい。それに……いきなり、一瞬だけだったけれど、高橋さんの唇が私の唇に触れて……うわぁ。
思い出しただけで鼓動が早くなって、思わず両手で口を押さえていた。
「どうかしたのか?」
嘘。
高橋さんに、怪しまれてしまった。
「あっ、い、いえ、何でもないです」
まさか、さっきのキスのことを思い出してました。なんて、とても恥ずかしくて言えない。ただでさえ、高橋さんの顔をまともに見られないというのに。
「フッ……。お前は、本当によく分からない」
高橋さんが微笑みながらそう言っていたが、私にしてみたら、そういう高橋さんこそ、よく分からない。高橋さんは、何時だって何でそんなに余裕なんだろう? 私は、何時も焦ってばかりいる。でも、そんな高橋さんと……。うわぁ、まただ。もう、思い出すのはやめよう。でも、直ぐにまた思い出してしまう。助手席に座って、忙しく変わる私の行動を見て、高橋さんが盛んに小首を傾げながら微笑んでいた。
明良さんの家は、高橋さんと同じようにマンションで地下に駐車場があって、高橋さんは勝手知ったるといった感じで客用駐車スペースに車を停めると、助手席のドアを開けてくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「歩けるか?」
「はい。大丈夫です」
地下駐車場からエレベーターホールに入る手前にガラス張りの自動ドアがあり、玄関のエントランスと同じようにオートロックになっていた。
高橋さんが部屋番号を押して、インターホンを鳴らすと直ぐに明良さんの声がした。
「ホイさ」
高橋さんが声を発する前にドアが開いたので、高橋さんは無言のまま私を誘うようにしてエレベーターホールに入ると、ボタンを押してエレベーターを待っていた。
程なくしてエレベーターが到着して乗ると、11階のボタンを押した。