来る日も来る日もXをして
「・・・すみません。直接引き継ぎしてないんで。」

「あなたが仕事サボってばかりいるから、直接出来なかったのよ!」

社長は完全に取り乱しており、部長が冷静に対応する。

「確認の為試し刷りが送られてきたでしょう?表紙に載ってるアイテムを見れば、去年の商品だとわかるはずだけど。」

「すみません、試し刷り見ずに『これで本刷お願いします。』ってメール返信しました。」

「はぁ・・・この書類の山のどこかに未開封のままあるんだね。」

「でも正直、見ても去年の商品だとわからないと思います。」

「自社商品は興味なくても把握しておきなさい。仕事なんだから。それに私に確認をとってから本刷に進まなくちゃいけないんだよ。」

「すみません。」

「まったくあなたは!カタログ、たくさんのお客様に送っちゃってるのよ!?毎シーズンのカタログがほしいってわざわざ個人情報を登録してくださった大切なお客様達が、送られてきたカタログを見て『これほしいわ。』って思ってもその商品はもう売られてないのよ!?あなたのお父様は私の大切な友人で恩人だから勤務態度が悪くても目をつむっていたけど、さすがにこれは看過できないわ!」

社長がそう言うと東雲くんは『じゃ、クビにしてください。』と言い放つ。

「早くやめたかったんです。責任とってやめます。このことでかかる費用も多めに払います。」

「な、なんですって!?」

「昼食から帰ってから荷物まとめます。」

東雲くんはそう言ってスタスタと出入り口に歩いていく。

社長はわなわなと震えていて部長は『待って!話は終わってない!』と彼を追う。

考える前に体が動いていた。
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