来る日も来る日もXをして
『フィンランド(ヘルシンキ)とハワイ(ホノルル)の距離:10961キロ 』

画面にはそう表示されていた。

「どれくらい遠いのか、よくわからないよね。」

明日先輩は穏やかに言った。なんだか自分がハワイに行くことも先輩と会えなくなることもまだ現実味がなかった。

「そうですね。飛行機で何時間、とかのがまだわかりそう。直行便とかあるんですかね?」

そのままそのスマホで調べようとして画面に指を置き、これは先輩のスマホだと思い出す。指を離そうとした瞬間、隣に先輩の人差し指が並んで触れた。

「・・・キスのこと、出発までになんとかしなくちゃいけないね。」

「そ、そうですね。」

指を画面から離そうとすると先輩の人差し指が私の人差し指を捕まえる。戸惑うが指を離そうとは思わなかった。

「その、お互い頑張りましょうね。」

先輩が何も言わないのが気まずくて月並みの言葉で沈黙を埋める。先輩の顔を見ることは出来ず、絡み合う人差し指を見ていた。

何か言わなければ、ととりあえず開いた唇を明日先輩の唇が吸い込んだ。ふたつの唇が一体化するのと同時に私の心全部が先輩の心に包み込まれてふたりの心がひとつになる。音を立てて舌が絡む。触れても触れてもまだ足りない。先輩に対してのモヤモヤは確かに心の中に存在しているのにそれを認識することが出来ないほどの熱く濃い想いだ。

明日先輩が私をグッと抱き寄せ、先輩の膝に乗る形になった。先輩の首に腕を回してしがみつく。足を思いきり開いているのでスカートがまくれ上がっていたがそんなことはどうでもよかった。

はぁはぁと荒い息遣い、粘膜が触れ合う音、会議室に響くなど言語道断の音達だ。以前愛来(あいら)ちゃんに『先輩見てください、このシーン最高ですよねぇ。』と見せられた漫画アプリの会議室での深いキスシーンを冷めた目で見ていたのは他でもないこの私だった。『理性がとぶ』のを初めて体感していた。
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