来る日も来る日もXをして
席に戻ると隣の美彩(みあや)ちゃんのデスクの上が片付けられていることに気づく。彼女は仕事中はデスクの上を資料やらお菓子やらで渋滞させるタイプだった。今日は外出や打ち合わせはなかったはずだ。

「愛来ちゃん、美彩ちゃん知らない?」

「早退してましたぁ。」

「えっ、体調悪いのかな!?」

「課長にはそう言ってましたけどぉ・・・さっき忍くんが来て美彩先輩に声かけてたんです。なんか普通じゃない感じで。先輩すごく嬉しそうにしてて二人で廊下出てって、戻ってきたら先輩、デスクの上急いで片付け出してぇ・・・。」

「!?それって・・・!」

「きっと忍くんがなんか嫌なコトあって、美彩先輩にオトナな八つ当たりしてるんでしょうねぇ。ほんと、なんで私じゃないんだろぉ?漫画みたいで興奮するのにぃ。」

愛来ちゃんは天井を仰いでから私に視線を戻した。

「ていうかぁ、美彩先輩が仮病使ってまで早退するとか驚きですよ。むしろちょっと引きます。そうゆうことするヒトじゃないと思ってたし。やっぱり好きだからなんですかね?『恋はモウモク』ってやつ?私、そういう気持ちぜ~んぜんわかんないです。女のコの幸せは愛されて尽くされることなんだから、主導権握るのはこっちじゃなきゃ。まぁ、ヒトのコトなんてど~でもいいですけどぉ。一服してきまぁす。」

愛来ちゃんの背中を見送ってから東雲くんに『美彩ちゃんが嫌がることはしないで』とメッセージを送る。思っていた通り既読にはならない。迷ったけれど美彩ちゃんにも『大丈夫!?』と送ってみるがこちらも同じだった。

彼女は嬉しそうにしていたそうだし、東雲くんが自分に気持ちがないとわかっていて彼に従った。外野がとやかく言うことではないのかもしれないけれど・・・。


翌日の金曜日、私は一日外勤で直行直帰だったので会社には行かず、明日先輩とも東雲くんや美彩ちゃんとも会うことはなかった。

東雲くんからの『会いたいです。どこにでも行くんで。』というメッセージに気づいたのは、他県で開かれた和雑貨の展示会に参加し電車で家路についた時だった。
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