来る日も来る日もXをして
しばらくそのままでいると東雲くんは泣き止んだ。少しずつ抱きしめる力が弱くなると体が離れる。目に入った東雲くんの綺麗な泣き顔に強い気持ちがこもるのがわかった。

「僕、更科さんのことが好きです。」

「えっ・・・。」

「初めて知ったんです。人を好きになるって気持ち。今までずっと嫌悪感を(いだ)いていました。でもこんなに尊いものだったなんて・・・。」

「東雲くん・・・。」

「今まですみませんでした。勤務態度のことも更科さんや高部さんにしたことも・・・僕、更科さんとハワイに行って一からやり直します。やり直したいです。」

「うん・・・。」

明日(あけひ)さんとは付き合ってないんですよね?それに離れてしまうし。」

「う、うん・・・。」

改めて認めてしまうと胸がズキズキと痛む。

「僕が更科さんにふさわしい男になったら、僕と付き合ってくれませんか?超絶大切にして世界一幸せにしますから。」

「!そ、それは・・・。」

「今はそんなこと考えられないと思いますけど、絶対に僕のコト好きにさせてみせます。」

東雲くんの瞳が輝いているのは、先程の涙のせいではなさそうだった。


土日。家の片付けなどをして淡々と過ごした。ハワイに行くのはまだ数ヶ月先───明日先輩がフィンランドに()った3ヶ月後───だけれど、あちらに行ったら数年は戻ってこないのでこの部屋は解約し荷物は実家に送ることになる為不要なものを整理した。

明日先輩が月曜日大人でいる為にキスが必要なのに日曜日の夕方になっても先輩からの連絡はなかった。

───体調でも悪いのかな。もしかして、あのショートカットの女性とキスしたから私は不要とか・・・!?

そう思ったら何も手につかなくってしまった。でもいつもキスに関することは先輩から連絡が来ていたし、こちらから『今日のキスどうしますか?』なんて聞くのはさすがの私も躊躇してしまう。

無意味に部屋をうろうろしていた時、スマホが明日先輩からの着信を告げた。その内容に私は力なく座り込んでしまった。
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