来る日も来る日もXをして
明日先輩と(ユカ)さんは常に皆に囲まれていて話すタイミングがないままパーティーが終わり内心ホッとして宿泊先のホテルに戻る。シャワーを浴びホテルの寝間着に着替え髪を乾かし終わったところでドアがノックされた。

「二人で二次会しません?(すずな)さんパーティーで全然飲んでなかったでしょ?ここなら潰れてもすぐ寝れるし。」

買い物袋をぶら下げた忍くんは私の返事を待たずにズカズカと部屋に入ってきてテーブルの上に飲み物やおつまみを並べている。

「ごめん私そういう気分じゃ・・・元々お酒はあんまりだし。」

「知ってます。飲んだら『そういう気分』になれますよ。これ美味しそうでしょ?パッケージも綺麗だし。新発売らしいです。アルコール3%(パー)だからジュースみたいなもんですよ。」

そう言ってチューハイの缶を開けて私の唇に当ててくる。フルーティな香りが鼻をくすぐり、思わず缶を受け取ってしまうと『乾杯。』と、缶をぶつけられ『じゃあ一本だけ。』と缶に口をつけると忍くんはニッコリと笑った。


二時間後、私はすっかりふんわりとしていた。こんな風に気持ちよく酔ったのは初めてだ。人前で酔った姿を見せるのは恥ずかしかったのでお酒はいつも控えていたのだが、飲めば結構飲めるのだと知った。

「・・・僕ずっと言ってましたよね。明日さんのこと好きなままでもいいから、僕と付き合ってって。」

「・・・そんなことできないよ・・・。」

「でももう明日さんは結婚したんですよ。」

「わかってるよ・・・わかろうとしてるよ・・・。」

「・・・菘さん、気が進まなかったけどお酒飲んで今気持ちいいでしょ?」

「え?うん。」

「じゃ、気が進まないと思うけど僕とキスしてみませんか?気持ちよくなるかも。」
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