来る日も来る日もXをして
懐かしい愛おしさに浸ってしまいそうになるけれど、かろうじて覚醒した理性が唇をはがし明日先輩を突き飛ばす。

「何するんですか!!」

「ごめん・・・東雲に渡したくなくて・・・。」

「な!?なに言ってるんですかっっ!!」

───自分は結婚したのに!

「更科・・・」

「見損ないました!先輩って本当の本当はただのチャラ男だったんですね!私、部屋戻るんで!」

「待っ・・・」

自販機コーナーを出ようとする私の腕を明日先輩が掴む。思い切り振り払うと指が自販機に当たりすごく痛い。

「大丈夫!?おい!」

先輩の腕が離れた途端に走り出す。流れる涙は指の痛みからではなかった。部屋に戻るとベッドに飛び込んで声を殺して泣いた。

明日先輩とキスをしていたあの頃。その中で芽生えて育った気持ち。それは花を咲かせることはなくても私にとっては捨てられない大切なものだった。でもそれを汚されたような気がした。そもそも私が恋をしたのは先輩の一部に過ぎなかったということだ。

買いに行ったはずの水を買い忘れていることにも気づかずに枕を濡らし続けいつの間にか寝てしまった。
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