来る日も来る日もXをして
「・・・皆変わってくね。」

「え、急になんですか?」

「忍くんが私にそんなこと言うようになったり、美彩(みあや)ちゃんも・・・。」

「ああ、驚きましたね。すっかり雰囲気変わっちゃって。幼馴染みと結婚するから会社辞められるんですよね。」

美彩ちゃんはふわふわパーマヘアをソフトボールをしていた学生時代にしていたと言うベリーショートにし、いつも着ていた甘フェミニンなトップスとスカートではなくシンプルな白シャツに黒いパンツで颯爽と現れたのだ。見とれてしまったのはその姿が彼女に似合っていたからだけではなかった。(かも)し出すオーラまで変わったように思えたのだ。

『忍くんといると刺激的で興奮したけど、今なんだかすごく気持ちが楽なんです。これが私なんだ、ここが私のいるところなんだって。』と穏やかに笑っていた。その笑顔は変わってからの忍くんのようだった。

「僕も高部(たかべ)さんも、自分の在り方や目指すところ、求めるものを間違ってたのかもしれません。今思えば無理してて負荷がかかってました。どこかで違和感を感じつつ気づかない振りをしてたんです・・・ま、楠木(くすのき)さんはぶれませんけど。気持ちいいいくらいに。」

愛来(あいら)ちゃんは忍くんの代わりのイケメンと楽しみつつ、婚活に励むという相変わらずの毎日を送っているそうだ。

「はは、それが愛来ちゃんにとっての正解なんだろうね。」

「色々強烈ですけどね。」

「私も・・・変わんなきゃね・・・。」

「何言ってるんですか。菘さんはそのままで・・・って寝てるし。」


東京駅に着くと忍くんが起こしてくれる。いつのまにか眠っていたらしい。そこから空港に向かう。

荷物を預け展望デッキで飛行機を見ていると忍くんが『ん?父から電話だ。なんだろう。話してきますすね。』と室内に入っていった。

離着陸する飛行機を無心で見ていると後ろに人の気配を感じた。その気配から溢れる気持ちが自分に向いている気がして振り向いた途端、私はその人の腕の中にいた。
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