来る日も来る日もXをして
「あれさ、フィンランドに行って店をやりたいってことだったんだ。」

「・・・え?」

「前言ったようにばあちゃんはフィンランド(あっち)に帰りたがってたし、俺自身も挑戦してみたかった。うちの会社の雑貨が好きでフィンランドにも広めたいって就活してる時から考えてたけど、自分に自信なくて言えなかったんだよ。彼女を接客してうちの雑貨への想いを熱く語り合ってたら思わずポロッと出ちゃって。内密にしてもらってた。」

「そうだったんですか・・・。」

先輩の秘密が仕事関係のことと知りホッとするが『彼女』と呼んだ(ユカ)さんのことを思うと胸が苦しかった。

「その後念願のフィンランド店の企画を俺も中心になって立ち上げたけど、チーフとしてあっちに行くのは先輩(渡辺さん)に決まって正直悔しくて、俺の実力が足りなかったんだって恥ずかしくて、更科には言いたくなかった。好きな女性(ひと)の前で変なプライド出ちゃってさ。結局俺が行けることになったけど、先輩(渡辺さん)が行けなくなったからその代わりだし。」

「・・・。」

『好きな女性』じゃない。私は先輩が過去に『好きだった女性』だ。

「今言えたのは、俺自身フィンランド(あっち)での結果に手応えを感じることが出来て、自分に自信を持てたから。」

「本当、すごいですもんね・・・SNSでうちの会社のタグ見ると、フィンランド語の投稿がたくさん・・・。」

「まだまだこれからだけどね・・・変に秘密にする方が恥ずかしいな、小さい男だなって今更気づいて・・・ごめん、悪かった。」

「そんな風には思いませんけど・・・教えてくれてありがとうございます。」

「・・・それで、更科に改めて言いたいことがあって。」

「はい。」

てっきり仕事のことだろうと思ったのに、先輩が放ったのは信じられない言葉だった。

「俺と付き合ってほしい。」
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