来る日も来る日もXをして
「なっななな!・・・痛っ!」

弾かれたように明日先輩から離れると後ろの壁に思いきり後頭部をぶつけた。

「大丈夫!?」

起き上がった先輩が頭を優しく撫でてくれる。子どもに頭を撫でられるなんて違和感ありありだ。

「・・・悪い。つい。殴っていいから。こないだみたいに。」

そう言って先輩は毛穴ひとつないゆで玉子のようにツルンとした頬を差し出してきた。

「はっ!?い、いいですよ!子ども殴るなんてできません!」

「じゃ、何したらいい?お手?」

本当にしようとしていて焦る。

「べ、別に何もしないでいいですから!」

「でも、そういうわけには・・・。」

「じ、じゃあ、何か考えますから!今日はいいです。」

「・・・ありがとう。これで大人に戻れる。」

明日先輩は頭を下げた。その深さと長さに慌ててしまう。

「あ、えっと!・・・今のって・・・その。」

「ん?」

「か、可愛いとか、ムード作りのお世辞でも嬉しかったっていうか・・・。」

『しっかりしてるね。』とか『かっこいい。』と言ってもらうことはあったけれど、『可愛い』と言われたのは初めてだった。むしろ『可愛げがない。』と言われるくらいだ。

「別にムード作りとかじゃないから。」
< 18 / 162 >

この作品をシェア

pagetop