来る日も来る日もXをして
「あの・・・見てないよね?」

───お願い!『え?何をですか?』って言って!

その願いはむなしくも届かなかった。

「更科さんと明日さんがキスしてるところなら見ましたよ。僕が寝てるソファから見えるところで始まったので。目が覚めてもしばらくむにゃむにゃしてたんですけど、それで覚醒した感じですね。」

東雲くんは淡々と言い放った。

「!!!」

──いたの全然気づかなかった・・・東雲くんて異常なくらい存在感ないんだよね・・・下の名前、『(しのぶ)』だし、忍者なのかも。

入社二年目の東雲くんは常に明日先輩が家でしていたような瓶底眼鏡とマスクをしていて、私は彼の顔の全貌をいまだ見たことがなかった。

「付き合ってないとのことだし、何か弱みでも握られてキスしてるんですか?」

「いや、違う。むしろ、こっちが握ってる・・・のかな?」

その言葉に東雲くんの瞳が輝いたように見えた。
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