来る日も来る日もXをして
そこにもコンシェルジュがいて声をかけないと住宅の方には行けない感じだ。先程の女性よりも明らかにベテランのロマンスグレーの男性だった。執事のようにも見える。

───もしかしてここってVIPフロアとかなのかなぁ。東雲くんてお坊っちゃまだっていう噂だったけど、本当だったんだ。

フロントの老紳士は私と目が合うとお辞儀をしてからカウンターを出てきた。一連の美しい所作に思わず見とれてしまう。上品に微笑み、『東雲様のお客様ですね。こちらへどうぞ。』と案内してくれる。扉が3箇所にあり、それぞれのお宅に繋がっているようだ。

──てことは、この贅沢なロビーもこのおじさまもその3つのおうちの為だけに存在するの・・・!?

クラッとするくらいのカルチャーショックを受け、老紳士がカードキーで開けてくれたドアを入っていく。長い廊下の先に大きな扉があり、緊張しながらインターフォンを押した。

「どうぞ。」

東雲くんの声がしてドアが自動で開く。

その先に立っていた人を見て、部屋を間違えたかと思った。
< 37 / 162 >

この作品をシェア

pagetop