来る日も来る日もXをして
「えっ・・・。」

「いやとは言わせませんよ?気持ちよかったでしょ?」

「・・・う、うん。」

「素直でいいですね。」

「でも、そんなに稼げるならなぜうちの会社に?ていうか、うち副業禁止だよね?」

「・・・あ~、会社が副業なんです。社長も了承済です。」

上機嫌だった東雲くんが一転、表情を曇らせた。

「それって?」

「僕は自分の腕1本でやっていこうと思ってたのに、親が『一度は就職して3年はそこで働け。』って。父親と社長、大学の同級生なんです。父は会社を経営してますけどサラリーマン経験もあり、人の下で働く経験も必要だって。」

「そうだったの・・・。」

「会社の1ヶ月分の給料なんてこの腕で20分で稼げちゃう僕からしたら、和雑貨企画して、予算がどうのって話し合いして、試作繰り返して、1000いくらでちまちま売ったり、SNSで地道に広報したりなんて馬鹿らしくて。僕にはなんの訓練も必要ないし、広報なんてしなくても勝手に広まって、一年先まで予約が埋まってるんですから。」

「東雲くんの勤務態度、注意しても一向に改善の気配がないから部長にも相談したけど、指導がないみたいなのはそういう理由だったんだね。」

「更科さんうるさいな、と思ってましたよ。だから今日ヒイヒイ言わせることが出来て、その意味でも満足でした。」

そう言って東雲くんはまたニヤリと笑った。そのやたらと美しい笑顔が私を苛立たせた。こうなると言いたいことを言わずにはいられないたちだ。
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