来る日も来る日もXをして
ピンク色の照明の下で円形のベッドが回っている。

「い、いかにもって感じですよね。今こういうホテルってめっちゃおしゃれだったり、いろんなコンセプトがあったりするみたいですけど。学校みたいなホテルとか。女子会したりとかひとりで泊まったりとかもするみたいですよ。」

あまりにも気まずくて饒舌(じょうぜつ)になってしまう。先輩も目のやり場に困っているようだ。

「やっ、やっぱり俺、どっか他のとこ探すよ。」

そう言って出ていこうとする先輩の腕を掴む。

「ここしかなかったですよね。」

数分前、大人なホテルの入り口。幸い部屋が2つ空いていたので一人1部屋ずつとろうと思ったら、後ろから来た慣れた様子のカップルが先に部屋をとってしまい、一緒の部屋に泊まることになった。

数十分前、最終の新幹線を逃してしまい、在来線で出来るだけ東京に近づいた。在来線の終電の終着駅、始発で新幹線の停車駅まで行き新幹線で帰れば会社に間に合うところまで来られた。ここで始発まで時間を潰すことになる。

ネットカフェやカラオケボックス、もしくは朝までやっているファミレスや居酒屋やバー、何かしらあるはずだと思ったのにあったのは何年も前に閉店し時が止まったままのようなスナックやカラオケボックスだけで、今も営業しているのはこのホテルだけだったのだ。
< 62 / 162 >

この作品をシェア

pagetop