来る日も来る日もXをして
『大丈夫ですか?』と駆け寄るがすぐには話しかけられていることに気づかず、しばらくしてから『ん?』と聞き返される。

「大丈夫ですか?体調良くないですか?」

「んー?ああ!四つ葉のクローバー探してての。」

「四つ葉のクローバー?」

「そ。孫にあげたいんじゃ。昔あげたら今でも大事にしてくれててな。最近なんだか大変みたいだから元気づけたくてな。」

「そうだったんですか。素敵ですね。」

「でもなかなかなくてな。」

会社のビルの前にはグリーンが敷かれた広場が広がっていた。お休みに四つ葉のクローバー探しをしている親子を見てほっこりしたこともあった。

「もう暗いので見つけるのは大変ですよ。それに寒いし。もしよかったら私が探しておきますよ。ここのビルに勤めてるので。」

「本当か?」

「はい。」

「いやー助かるわ。最近腰が痛くて目も見えにくくての。まあ、もうこの歳だからの。仲間内では元気な方じゃ。」

おばあさんは『よっこらしょ』と立ち上がろうとするがよろけてしまいとっさに支える。

「おーすまんね。」

「いいえ。あのここまでは歩いてこられたんですか?電車ですか?」

「病院行ったから電車乗って来たよ。」

「ならよかったら駅まで一緒に行きませんか。今日金曜日だしこの辺いつもにも増して人通り増えるんです。お酒飲んでる人も多いし。」

「そりゃ助かるよ。」

「いいえ。私も駅まで行きますから。」

駅までの道で、おばあさん───サチさん───はこの辺りの昔の様子について教えてくれてとても興味深く聞かせてもらった。明日先輩に話したら喜んでくれそうだと思った。
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