来る日も来る日もXをして
駅に着く。

「じゃあ、四つ葉のクローバー見つけたら送りますね。」

「おお。お姉さん、こんなばばあの心配してくれてありがとな。」

「いえ。今日少し悩んでいたので、サチさんとお話出来て気持ちが柔らかくなりました。」

「そうかい?」

「はい。」

大きく頷くとサチさんは顔をくしゃくしゃにして笑ってくれた。心を温めてくれるとても魅力的な笑顔だった。

「ところでお姉さんは独り身かい?」

「え、あ、はは、そうなんです。」

サチさんの世代では私の歳には結婚している人が多いんだろうなと思った。

「うちの孫の嫁に来てくれんかのぉ。」

「え!?」

「孫はお姉さんと同じくらいの歳で、息子に似て男前なもんでおなごは寄ってくるんじゃが、一向に先に進まなくての。不器用だが優しくていい子なんじゃ。」

「そうなんですね。」

───社交辞令みたいなものだよね・・・?

「もしお姉さんに好いとる男がいなければ、今週末でも会ってもらえんか?孫は週末引きこもってるようだからの。」

───えっ本当に!?

『好いとる男』・・・その言葉に瞬時に明日先輩の顔が浮かんできてしまう。先輩とは明日の土曜日出かけて、日曜日も月曜日に大人でいるためのキスをするので会うことになっている。その事で私の気持ちはすっかり華やいでいた。

「ごめんなさい。実は気になる人と週末会うので。」

「そうかぁ。残念だぁ。」

おばあさんは肩を落とした。

「すみません。私なんかに大事なお孫さんをって言ってくださったのに。」

「いやいや。好いとる男と幸せになれるといいの。お姉さんの幸せ願っとるよ。」

「ありがとうございます。」

そうしてサチさんと別れた。

───自分の気持ち、認めちゃった・・・。

そう思うととても晴々した気持ちだった。
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