来る日も来る日もXをして
サッパ舟に乗り、町並みを見ながら川を進んでいく。この時期は舟にこたつが設置される。

「外でこたつに入るって不思議な感じだけど、いいね。」

「なんか、先輩とこたつに入るって、しっくり来るっていうか、落ち着くっていうか・・・あ、な、何言ってるんだろ私。」

隣に座っている明日先輩が無言でこたつの中で手を繋いできた。恥ずかしくて彼の方を見ることはできず、景色に集中しようと努力する。

予定より長い乗船時間だったように感じた。終着地点について先輩が先に立ち上がる。手はまだ繋がれたままだ。先程まではこたつの中にあり見えていなかったそれがさらされて恥ずかしくなってしまうが離したくはなくてそのまま立ち上がるがよろけてしまい、先輩が支えてくれる。

「大丈夫?」

───先輩の声が近い。そっちの方が大丈夫じゃない。なんでこんなにドキドキするの。

「す、すみません。ずっと正座してたから。」

「こたつなんだから足伸ばせばよかったのに。」

先輩に手を引かれ下船する。

「あはは。そうですよね。なんか緊張しちゃって・・・あ」

───なんか先輩といると自分の気持ちがそのまま口から出ちゃうことが多いな・・・。

「それって・・・手繋いでたから?」

「え、えーと、あ、あそこのお芋スイーツ美味しそうですね!」

「更科、答えて。」

先輩は私が指差した先に回り込んで私の視界を遮った。もう逃げられなかった。自分の恋心から。
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