来る日も来る日もXをして
「・・・化粧がついちゃったな・・・いろんな香水の匂いとよだれまで・・・。」

再び川沿いの町並みを歩きながら明日先輩はコートを見て苦笑いしている。おばさまグループの後はギャル軍団、更にはママ友チームに声をかけられ写真係を引き受けていた。皆揃って先輩とスキンシップをし、先輩はギャル達と一緒にポーズをとったり赤ちゃんをだっこするなどして一緒に写真に収まっていた。

「先輩は若い女性にも大人の女性にもモテますよね。」

───こんなにモテる人と私釣り合わないよね・・・。

「言い寄られるのは苦手だよ。断れなくて食事行ったりするけどどっと疲れるから次誘われても断ろうと思うのに、条件反射みたいにOKしちゃうんだ・・・。」

「そうなんですか・・・断れないっていうの、私もわかります。」

「前から思ってたけど、俺達似てるところあるかもね。」

「そうですね。」

「・・・さっき、途中になっちゃったけど、なんて言おうとした?」

明日先輩が立ち止まったのでつられて立ち止まると先輩がこちらを向き真剣な眼差しに捕えられる。

───『私は・・・私も・・・。』の続き、それは・・・。

急に胸が高鳴り体が熱くなりのどが渇いたように感じる。まるで真夏に全力疾走してきたかのようだ。このまま先輩の胸にゴールしてもいいのだろうか。

「更科、教えて?」

明日先輩が何かを期待するような眼差しを向けてくる。

───もう駄目だ。

『この気持ちは擬似的なもの』
『先輩とこのような関係になってまだ一週間』
『先輩と私は釣り合わない』

全ての気持ちは『好き』に上書きされる。私は覚悟を決めた。
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