【設定②】わたしが初めて恋をした話。



「ユミ、私忘れものしちゃったから行ってくるよ。先に帰ってて」
「えっ? 帰り、車出るって言ってたよ」
「バスで帰るから出発していいって言っておいて」
 ユミにそれだけ言うと、さっき通ってきた道を引き返してテレビ局に『入場許可証』を付けて再び入る。スマホを忘れるなんて何やってんだろ……本当に。
 会議室に行くとまだ鍵が閉まってなかったみたいでスマホを取って出ることができた。会議室から出ると「あれ、赤西さん……まだいたの?」とタイミングよく志賀さんが現れた。
「志賀さん……スマホを忘れてしまって、戻ってきたんです」
「そうなの? というか、さっき車出ちゃったよ。大丈夫?」
「バスで帰るので大丈夫です」
「え、バス? 赤西さんさえ良かったら俺、送っていくよ。その代わりと言ったらいけないけど……手伝ってほしいんだけどいいかな」
 お手伝いするだけで送ってもらえるのは嬉しい……それに、もう少し一緒にいられるし。
「お手伝いします!」
「良かった、よろしくね」



< 11 / 34 >

この作品をシェア

pagetop