暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
定刻二十二時から始まったアメリカの大手ホテルチェーンとのウェブ会議は二時間ほどかかった。
英会話に自信のない私に会議の詳細まではわからないけれど、和気あいあいの和やかムードもあり、議論が白熱する場面もあり、あっという間の時間だった。
日本での事業展開をもくろんでいる相手企業と、逆に海外進出を図りたい一条コンツェルンにとって有意義な会議。
そして、その様子を遠巻きに見ていた私が一番感じたのは副社長の優秀さだ。
完璧な語学力もさることながら、会話を自分のペースに持っていくタイミングと、強弱をつけた駆け引き。以前から思っていたけれど、創介副社長は本当に優秀なビジネスマンなのだと改めて実感した。

「どうした、ボーッとして。眠いのか?」
「違いますから」

ほら、さっきまでできる男って雰囲気をまとっていたのに、電話を切った瞬間から意地悪でわがままな魔王の復活。
とてもじゃないけれど、同じ人物とは思えない。

「片づけが終わったら送って行くぞ」
「いえ、タクシーで帰りますから」
大丈夫ですよと言ってみたけれど、
「いいから、行くぞ」

やはり魔王は言うことを聞いてはくれない。
副社長の性格を把握している私としては、こういう展開になる予感はあった。
そして、言い出したら絶対にひかないものわかっている。
仕方ない、素直に送ってもらうとしよう。
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