暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「ところで、さっきの車が噂の上司?」
「え、ええ」

どうやら車で帰ってくるところを見られていたらしい。

「お金持ちなのね」
「うん」

あの車を見ればみんなそう思うわよね。

「付き合っているの?」
「まさか。ただの上司よ」

ちょっとわがままで、自己中で、人の言うことを全く聞かないけれど、正直で仕事のできる上司。

「ただの上司があんなに大量のブランド物の服を買ってくれる?」
「それは・・・」

確かに変だと思うけれど、それは副社長なりの謝罪の形だと思う。

「お金持ちの道楽ってことかしら?まあね、あんな高い外車に乗れるならお金は掃いて捨てるほどあるんだろうし、いい身分よね」
「美愛、そこまで言わなくても・・・」
美愛の言葉に、「何の苦労もなくていいわね」の含みを感じて、ムッとした。

創介副社長は確かにお金持ちだけれど、何の苦労もなくお気楽に生きているわけではない。
お金についても決して浪費癖がある訳でもなくて、いいものを大事に使っているって印象。
間違っても『お金持ちはいいわね」とひとくくりにされるような人間ではない。

「望愛も言っていたじゃない、魔王なんでしょ?」
「そう、だけど」
時々魔王に見えるけれど・・・

「そんな最低男を相手にしたらダメよ。望愛は優しくてすぐに人を信じるから」

何だろうこの感情。
美愛が発する言葉の一つ一つが引っかかる。

「そういう男って、陰で何人もの女の人を泣かせているのよ。お金にものを言わせて遊んでは捨てるの。最低よね」

まるで見てきたことのように言う美愛に、それまで我慢していた私も限界を迎えた。
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