暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「何も知らないくせに、いい加減なことを言わないで。副社長は確かに御曹司でお金持ちだけれど、浪費癖がある訳でも、遊んでいるわけでも、ましてや最低男でもないわ。ちょっと言葉が強くて周りとの調和を求めないところはあるけれど、まじめで実直で本当は優しい人なんだから」
言いながら涙が込み上げてきた。

自分でもなぜこんな気持ちになったのかわからないけれど、私の分身ともいえる美愛が創介副社長のことを誤解しているのが我慢できなかった。

「望愛、その人のことが好きなのね」
「えっ」

私は怒っているのに、目の前の美愛はニコニコと笑っている。
どうやら美愛は私を怒らせるために言ったのだと、この時気が付いた。

「別に、好きなわけではないわ。ただの上司だもの」
「そうかしら、ただの上司ならけなされても平気なはずでしょ?」
「それは、美愛が誤解しているみたいだったから」
「それだけかしら?違うと思うわよ」
一人納得した顔で私を見る美愛。

私達は外見こそ違うけれど、生まれる前から共にいた存在。
そこには不思議な以心伝心があって、お互いがケガをすると、相手も同じ場所に不快感を覚えたりするし、同じように相手の気持ちが本人よりもよくわかったりもする。
実際、美愛は私が好きになった男の子のことを全部知っているし、私も美愛の初恋を家族の誰一人気づかない時期にわかってしまった。
感情が流れ込むというか、伝わるというか、うまく言葉では表現できない何かが私たちの間にはあるのだと思う。
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