暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～
「こうなった原因について、心当たりがありますか？」
苦々しい表情の課長に対して、
「いや、別に」
当事者である副社長が一番飄々としている。

でも、綾香さんがこんな行動に出るような心当たりと言えば・・・

「坂本さん何か思い当たることがあるの？」
私の顔色が変わったのに気づいて、課長が聞いてきた。

「えっと、ここのところ何度かおいでになったのに、仕事が忙しいからとお帰り頂くことが続いたんです。もちろん副社長の仕事が詰まっていて時間が取れないからですけれど、綾香さんは不満そうでした」
「そうだったのか」

実は私も気になっていた。
副社長の仕事が忙しいのはいつものことで珍しくはないけれど、綾香さんにしてみたら気に入らなかったのだろう。

「副社長は、白鳥家から何か聞いていますか？」

さすがにここまでの行動に出るからには何か事前に連絡があったはずだろうと課長は思っているらしい。

「白鳥家から縁談の話があったのは確かだ。もちろん俺は受けたつもりは無いが、向こうはずいぶん乗り気のようだったな」

まるで人ごとのように話す副社長の口調に違和感を感じた。
それは、課長も同じだったらしい。
< 112 / 195 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop