暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る～花嫁候補のようですが、謹んでお断りします～

その後、綾香さんからの電話が何度も鳴った。
さすがに「忙しくてお繋ぎできません」を繰り返せば、綾香さんだって避けられていると気づくわけで、段々と機嫌も悪くなっていった。

「ねえ坂本さん、あなた何の権利があって私の邪魔をするの？私は創介さんに直接お話がしたいのよっ」

半ば叫ぶような綾香さんの言葉が私に向かって飛んでくる。
段々とヒートアップしていく様子に恐怖を感じ何度か副社長に話そうかと思ったけれど、今副社長と綾香さんが直接対峙すれば事態はさらに悪化するように思えて出来なかった。

「申し訳ありませんが、お繋ぎできません」
電話を握りしめたまま、せめてもの気持ちを込めて頭を下げる。

普段から「そんなことをしたって相手には見えないぞ」と副社長にも笑われるが、誠意はきっと相手には伝わるものと信じたい。
だから、私は頭を下げ続けた。

「あなたのことは絶対に許しませんからねっ」

最後には捨て台詞をはいて、ガチャンと大きな音で電話を切った綾香さんの怒りが手に取るようにわかって、私は怖かった。
それでも創介副社長のことを思えば、毅然とした態度で臨むしかない。