暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「大分熱いぞ」
「・・・」

自分でも体調が悪いのはわかっている。
頭痛もするし、先程からは寒気もしてきた。
このままではいけないと思うけれど・・・

「今日はもういいから帰れ。車を用意させる」
「ま、待ってください」

こんな時に自分だけ早退できるはずがない。
一応急ぎの仕事は片づけたとはいえ、仕事は山積みだし報道のせいもあって普段より電話も多い。
それに、副社長のことが心配で帰れない。

「本当に大丈夫ですから、もう少しだけ仕事をさせてください。悪化するようでしたら早退しますので」

本当は早退なんてするつもりは無い。
でも、そうでも言わなければ副社長が納得しない気がした。

「わかった。何かあればすぐに言うんだぞ?」
「はい」

この時、私は少し違和感を感じていた。
普段の副社長だったら、自分の言い出したことは絶対に曲げない。
いくら私がお願いしても引くことはないのに、珍しい。

「正直、いてもらうと助かるんだ。俺一人では対応できない案件もあるし、倒れられると本当に困る。だから何かあれば必ず言ってくれ」

えっ。
思わず漏れそうになった声を飲み込んだ。
< 117 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop