暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「どう、して?」
一旦唇が離れて行ったタイミングで、私は言葉にした。

私達は間違ってもそういう関係ではない。
そんな雰囲気になったのも、私がケガをして送ってもらったあの時だけ。
そもそもあの時は、自分の不甲斐なさに柄にもなく泣き出した私を慰めてくれただけだ。

「嫌だったか?」
「いえ、そうでは無くて・・・」

嫌なはずはない。
だって、私は創介副社長に

「すまない、許してくれ。どんなに強がっていても、俺にだって辛いときがあるんだよ」
「副社長」
「バカ、こんな時に役職で呼ぶな。セクハラしたような気になる」

クスッ。
「じゃあ、創介さん」
私は名前を呼んで、顔を上げた。

「何だ?」
「今、辛いんですか?」

聞きたいことはもっと他にあるはずなのに、怖くて聞けないまま口にした言葉。

「そうだな。普段から人が俺のことをどう言おうと気にしないことにはしているんだ。注目されるものもって生まれた定めだろうからな。しかし、ここまで滅多打ちにされると正直参る。だからと言って相手が白鳥頭取のお嬢さんとなれば、あまり強硬な手段にも出られない。今回のことが原因でメインバンクの信頼を失い、一条コンツェルンを傾けさせるわけにはいかないしな」
「そうですね」

何でもないような顔をしていても、本心では悩み傷ついていたんだ。
そう思うと愛しさが込み上げて、今度は私から手を回した。
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