暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「慰めてくれるのか?」
「ええ」

もう一度重なった唇。
流れ込んでくる体温。
唇を割って入りこんで来た温もりが、私を翻弄する。

「ん、んん」
洩らすつもりは無いのに、こぼれてしまう鼻腔からの声。

クスッ。
不慣れな私の反応に、一瞬笑ったような音がした。

それからはただ無我夢中で、お互いを求め続けた。
厳粛な職場には不釣り合いな水音を響かせ続ける私たちは、どのくらいそうしていたのだろうか。
気が付けば放心状態で、脱力した私がそこにいた。

どうしよう、創介副社長とキスをしてしまった。
それも、自分から誘った記憶がある。
マズイ、マズイぞ。
頭の中がプチパニック状態の私は、勢いよく立ちあがった。

「すみません、失礼します」
言うだけ言って、私は駆け出した。

今は気持ちを落ち着けるのが優先。
そのことしか頭になかった。
しかし・・・

駆け出して、ドアを開け、廊下に出たあたりで自分の異変に気が付いた。
頭がフラフラして、手足に力が入らない。
何とか前に進もうとするけれど、
ドンッ。派手には壁へとぶつかり、
バタンッ。反動で廊下に倒れた。
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