暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「あの、本当にいいんでしょうか?」
「ああ、車を飛ばせば往復で30分ほどだ」
「すみません、ありがとうございます。家には連絡をしておきますので」
「そうしてくれ」

結局、俺が望愛の家まで着替えを受け取りに行くことにした。
もちろん最初はかなり抵抗していたが、それじゃあ新しいものを全部買ってそろえるぞと言うと渋々頷いた。
仕事についても、今日しければならない仕事は済ませてきたと説明すると納得した。
正直、今は何をやろうとしても外野がうるさすぎて身動きが取れないから、こんな時は一旦身を引いてしばらく静観するに限る。
そういう意味でも、今夜は俺もうちのホテルに泊まろうと思っていた。
ここにいれば緊急の仕事にも対応できるし、どうせ自宅の周りにはカメラを持ったやじ馬が集まっていることだろうし、無理して帰る必要はないだろう。

「帰りに食べられそうなものを買ってくるが、何か希望があるか?」
かなりの高熱だからたくさんは食べられないと思うが、本人が欲しいものが一番だろうと聞いてみた。

「あまり食欲はないのですが・・・あっさりしたものなら何でも」
「わかった」
「もしかしたら母が野菜スープを託けるかもしれませんので、それを持ってきていただけると助かります」
「野菜スープ?」
「ええ、残りものの小さく切った野菜と生姜を煮たもので、子供の頃から食欲がなくなると作ってくれたんです」
「おふくろの味なんだな。わかったもらって来るからから、おとなしく寝ているんだぞ」
「はい」
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