暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「それで、望愛の具合などうなんでしょうか?」
やはりお父さんはそのことが気になるようだ。

「先ほど医者に診せましたが、風邪のようです。薬も処方してもらいましたので回復するものと思っています」
今までの経過と症状についての一通りを、お父さんにを説明した。

「そうですか、それはありがとうございました。ところで、君は重さんの孫の創介君だよね?」
「はい」
「やっぱり。イヤー懐かしいなあ。子供の頃何度か会っているんだよ。ほら毎年恒例のガーデンパーティーで」
「ああ」

一条家恒例のガーデンパーティー。
毎年祖父主催でゆかりのあるお家の子供たちを招いて開いていた。
俺も中学までは参加していた記憶がある。

「小さい頃は望愛も遊んでもらったんだが、言っていなかったかい?」
「ええ、何も」
「そうか。それにほら、望愛が川に落ちてけがをしたとき君が運んできてくれたんだよな?」
「そういえば、そんなことが・・・」

そうか、先日のパーティーで足をねん挫した望愛の左足に残る古傷を見て何か引っかかっていたのはそのことだったのか。

「あの時は本当にありがとう。美愛と違って望愛はおてんばだったからケガも絶えなかったが、あの時は本当に驚いたし、君に助けてもらって感謝しているよ」
「いえ、そんな」

さすがに20年近く前のことで記憶ははっきりしまないが、ガーデンパーティーで川に落ちて動けなくなった女の子を助けた記憶はある。
そうか、あの子が望愛だったのか。
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