暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「一条さんは、望愛の上司の方ですよね?」
お父さんの隣に座っていた妹さんが聞いてきた。

「ええ、そうです」
「あのブランド物の服を買ってくださった方?」
「ああ、それは、こちらの不手際で望愛さんの服を汚してしまったお詫びに」
「ふーん」
何か言いたそうに俺を見る視線はなぜか強めだ。

双子とは言いながら体格差のある二人はあまり似てはいないが、目元や口元は面影が重なる。
やはり姉妹だな。

「今夜、望愛が帰ってこないのは私のせいですよね?」
「え、それは・・・」
さすがに本人に向かっては返事がしにくい。

「やめなさい、美愛」
「だってお父さん」

気を使われる本人からすると嫌なこともあるのかもしれないし、もっと普通に接してほしと思うことだってあるのだろう。
それでも、俺は望愛の気持ちを知っているから、望愛の行動に不満を感じているらしい美愛さんには複雑な思いがある。

「ほら美愛、あなたはもう寝なさい。あなたまで熱を出したら大変だわ」
「はーい」

お母さんに促され、美愛さんは携帯用の酸素ボンベを引きながらリビングを出て行った。
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