暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「ごめんなさいね、普段家にばかりいるものだからわがままで」
「いえ」

望愛とはタイプの違う女性だとは思うけれど、決して間違ったことを言っているわけではない。
家族から必要以上に気を使われれば俺だってあのくらいのことは言うと思う。

「小さいころから、望愛は美愛のために我慢ばかりしてきたんだ」
「そうなのよ。美愛もかわいそうだけれど、望愛だって苦労して来ているのよね」

お父さんもお母さんもちゃんと望愛のことをちゃんと理解してくださっている。
そのことに俺はホッとした。

「大丈夫です。望愛さんもわかっているはずですから」

自分のことは置いておいてまずは人のことを心配するあの性格は、ここに原因があるのかもしれないなあ。
御両親や美愛さんを見ていてそんな気がした。

「お世話を掛けますけれど、よろしくお願いします」
大きな紙袋に入れて差し出された荷物。
「はい、お預かりします」

俺は受け取って坂本家を後にした。
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